文字狂い

オタクにもサブカルにもなににもなれずに死ぬ

春を思う その二

春を思うと遠くにきてしまう。遠くに来たところで自分がもといた場所がどれだけよかったのかをわかって、すぐに戻ってきてしまったけど私は自分以外の何を知ったつもりになっているのだろう。春を追いかけてワクチンを摂取したらようやく初めて苦しかった。夢の中で獏が私に呪詛を逐一吹き込んできて、それが私の夢なのか現実にならないとしても幽霊ベースでの光景なのかわからないままだった。獏は本当にいるのだろうか。ぬめっとした唇に触れたとき私がちゃんとこれは夢だと割り切れているか何度も確認しながらまた魘された、俺が自由でないのはお前が自由だからだと言われた。
春は気がついたら二度と味わえなくなる空気のようなもので、冬で楽をしたら春が夏になってしまうらしい。私は今年の冬は統合失調症を頑張ったつもりだ。たくさん考えて考え尽くして、全部妄想だとわかった。エアコンの音は気にしたら負けだし、たとえ女の人の話し声が寝際に聞こえたとしてもいつものように春を思えばすぐに寝付くことができる。
春を思うと涙が出てくるときもあるけどこれは私の感情じゃない。春はもっと感動するに値しなくて、ただやわらかな絶望をしっとりと縁を撫でてため息をするのが毎年やってきたことだと思う。春を思うと、誰かの春を思うと、ロシアのことも許してしまう。誰かに春が訪れますように!
春が来ますように。今はもう冬じゃないから準備のしようがないけど、春が来たらみんなだいたいのこと忘れてくれればいい、ころっと態度を変えよう。今のうちに言いたいこと言って、春になったらビールに天ぷら食べて忘れよう。かりかりの衣を箸でなぞって、春を思うんだ。
ごめんなさい。なんか。今日もドトールでコーヒー飲んじゃうなあ。明日は病院に行った後映画を見る。今日はスケブとカッター板とコンセントを買いに行く。罪悪感って、報われるためなんですかね。報われなくてもいいから、罪悪感なくコーヒーを純粋な気持ちで味わいたい…