文字狂い

オタクにもサブカルにもなににもなれずに死ぬ

地方都市、民度、精神疾患

福岡は東京よりも東京で、昔アメリカ軍が福岡に原爆を落としたかったのがよくわかる。福岡の人はめちゃくちゃ本音しか言わないし、アメリカの体裁が悪い時もズバズバ言ってたからムカつかれたのだろう。

でも福岡が東京なのは福岡市に限る。久留米や北九州もなかなかいい都市のはずなのに、悲しいかな、民度が田舎臭い。私の実家は福岡市城南区だが、就職のために市外のベッドタウンに一人暮らしをしているが、ちょっと処住まいを変えただけでこうも人種が変わるもんだなと思う。まあつらくなったら実家に帰ればいいから別に気にしてないけど。

私の活動拠点は田舎だが、2020年にもなると田舎も田舎らしさを味変しだして、企業が営利活動をしやすい棲家にしようと区画整理している。だから、ちょっと道を踏み外したら住宅街なのに、こっちに行けばコメダ珈琲もガソリンスタンドも自転車屋もイオンもなんでもある。

働きやすいところでばりばり働いているのだが、上司がすぐ喝破すると泣いてしまう。なんで涙が止まらないんだろう。他の上司からは「そんなに泣くなら心療内科に行けば?」と言われたので行ってみることにした。

精神科を検索してすぐに出てくるところよりは、人づてに評判を聞いた病院のほうがブルーオーシャン的だと聞いたので、二駅となりくらいの精神科の予約を取った。待合室で待っていると、隣のブースに座っていたおじさんが話しかけてきた。

「僕は双極性障害なんだけど、君は?」みたいなことを訊かれたので「まだ来たばっかりです」みたいなことを言っていると、おじさんは持っていたノートをちぎり、電話番号を書いた。「僕は君の力になりたい」、そう言って、トイレへ入っていった。

精神科を教えてくれた先輩に「精神科でナンパされるのってありえるんですか」と訊いたら「みんな患者は知らない顔をして、極力顔を見られたくないようにふるまう」と言っていた。ぞっとしていると、診察室に呼ばれて、まず看護師に聞き取り調査をされた。なんで泣くのか、はもちろん、生まれてから今まですべてをざざっと話した。

待合室に戻ると、私がいた席におじさんが座っていて、やっと私はおじさんが幽霊だってことに気づいた。

「やあ君」「あなたはいつからここへ?」「まあいつでもいいだろう」「私が病気なのは、あなたのせい?」「そうかもな」「まあ!」

おじさんは全然見たことがない人だった。「おじさんは何者」「さあどうだろう」「祖先とか」「逆」「逆?」「俺はお前の子供なんだよ」

おじさんは昭和っぽいと言ってもいいような身なりなので、未来を生きてることに愕然とした。やはり令和は昭和なのだろうか。「君が妊娠するころには令和じゃないよ」あっそう。

おじさんは案外喋るのが下手くそなので、時期を見計らい、ツイッターを追っていると、ジャニーズが好きなのでジャニーズの情報ばかりを購読しているが、みんなジャニーズに対してかなり濃度の濃いファンレターを送っているらしく、文春がそのファンレターを抜粋しているのを読んだ。

文春は、いや、もはやインターネットに限らず、天啓というのは、そっくりそのまま信じるのはちゃんちゃらおかしい。どこかでは真実だとしても、そのどこかを切り取る際の次元の上げ方を、私はジャニーズを通して鍛えてると思っているのだが、この記事の、「ジャニーズ東北の成田八角くんは片親で、母親は占い師をやっていて、その客として潜入したが、そこでホメオパシーを勧誘された」みたいなニュースから発端は起こったが、「わたしならその御言葉清涼水を100セット買います、自己破産してでも、この愛成田君に捧げます」みたいなことを一人だけじゃなくいろんな角度でファンレターとして成立されていて、実際母親は金に困らなくなったらしいし、っていうニュースを読んだら、私が成田くんに送ったファンレターがいかに狭い世界でいかに陳腐かを思って、泣けてきた。

「泣くことないよ」おじさんが私の頭を撫でる。

診察室に入り、医者と話をする時、まず「さっきからおじさんの幽霊が見えます」「おじさんは私の息子と名乗っています」と言うと、見事にスルーされて、サインバルタブロチゾラムを出されて、薬局に向かった。

「俺、母ちゃんに認知されてうれしいな」おじさんは薬局でウォーターサーバーの周りをうろつき、ガンガン誤作動を起こし水を出させている。「これからは僕といつも一緒だね」私は思う、「いつあなたと出会うの?」「もうすぐだよ」「もうすぐなんだ」「俺は、世界一の母ちゃんだと思ってる」「そうなんだ」「じゃあね!」そう言って、息子は消えて、薬剤師に呼ばれると、あの息子がいた。