文字狂い

オタクにもサブカルにもなににもなれずに死ぬ

ロマンシング・サ・ガ3 二次創作(ハリード編)

 死食。300年に一度死の星が太陽をおおい隠しすべての新しい生命が失われる。人も獣も草花もモンスターでさえもその運命を逃れることはできない。
ある時、赤子が1人だけ生き残った。その赤子は死に魅入られて死の定めを負い、成長して『魔王』となり、世界を征服した。魔王はアビスという死の世界のゲートを開き、アビスの魔貴族達をも支配した。しかし、ある日魔王は突然いずこかへ消えた。
魔王が消えた後、世界は四つの魔貴族達に支配された。300年後、またも死食は世界を襲い、一人の赤ん坊を残した。その子は死の魅惑にたえ、死の定めを退け、長じて聖王となった。聖王は多くの仲間に支えられ、四魔貴族をアビスへと追い返し、アビスゲートを閉ざした。
そして今から十数年前。聖王の時代から300年後、やはり死食は世界を襲った。世界の人々もアビスの魔物どもも新たな宿命の子の出現を不安と期待を持って見守った。魔王か。聖王か。それとも。

そんなことはこのハリードにとってどうでもよかった。彼の祖国であるゲッシア朝ナジュ王国は滅亡し、許嫁であるファティーマ姫はいまだに行方知らず。彼の魂胆と言えば、彼の国を滅ぼした神王教団のハゲどもを潰すことと、ファティーマ姫を探すことなのだがその日暮らしの彼にとってそれは途方もない夢だ。……そのはずだった。

ハリードはロアーヌという都市にたまたまふらりと漂浪しつつ喫茶店で飲んでいた。
「おやじ、なかなかいい味だな」
「へへっ、自家製の特別品ですよ。お客さん、このあたりの人じゃないですね。かといって、開拓に来たようにも見えないし」
「ああ、開拓者じゃない。たまたま、こっちの方に足が向いたんだ」
「旅暮らしか~。いいですね~。ナジュ砂漠の方からいらしたんですか?」
「砂漠か……もう何年も目にしてないな……」

 ハリードはナジュ王国絶滅直前を回想した。

「姫、どこにいるのだー? 姫 ひめ ひ~め ヒメ」
しーん。
「もしや、姫の身に何か……」
「ハリード」
「姫、ご無事でしたか」
「もちろんよ。それより、姫はやめて、エル・ヌール」
「しかし、姫様は姫です」
「あなたらしい返事ね、エル・ヌール。明日には、ここを離れるのね」
「ええ。アクバー峠を越え、リブロフへ」
「また戦なのね。殿方は、戦場のあなたをすばらしいと誉めるわ。力強く、そして美しいと。でも私は、いつものあなたの優しさも好き」
「姫……」
 ハリードが何とも言えない感激の嵐に浸っていると、姫が近づき、
「姫はやめてと言ったでしょう。ファティーマと呼んで」

 回想が途切れた。というのも喫茶店に誰かが入ってきたからである。
「見回りご苦労さん」とマスターがそいつに挨拶した。
「とうとう降り出したぜ。この嵐じゃ、ゴブリンも夜遊びには出かけられないな」とチャラチャラした緑色の髪の毛の男が言った。彼に続いて、女がふたり、また男がひとりこの喫茶店に入ってきた。
「トム、エレンと話がしたいんだけど」と緑の髪の毛の男が訊くと、
「ああ、わかったよ。サラ、ちょっと手伝って。何か食べるものを作るから。マスター、キッチン使うよ」と、もうひとりの聡明そうな男が応答し、女のうち一人を連れてキッチンに向かった。

 緑のだらだら長い髪の男が、残っている一つ結びの女に話しかけていた。
「なあエレン、ヤーマスからの船がミュルスの港に着いたそうだぜ」
「そうなんだ。それで?」
「いろんな物がロアーヌまで運ばれて来てるんだ。一緒に見に行かないか? 何か買うのもいいし」
「一緒に行くのは構わないけど。でもねユリアン、あたしはね、あんたと恋人とか、そういうのにはなれないと思うんだ。子供の頃から知り過ぎてるよ。そりゃ、昔はお嫁さんごっこもやったけどね」

 あーあ。ふられてら。そうハリードが思っていた矢先、この喫茶店にまた来客者が現れた。
「馬を……馬をかして……お願い……」倒れ込みながら、彼女は言った。――この金髪はどっかで見たことがあるぞ、とハリードは思った。
開口一番は緑色のばさばさ髪の男だった。「大丈夫か?! こんな嵐の夜に一体どうしたんだ?」
「馬ならあるよ、娘さん」とマスターが言ったので
「かかわりあいにならん方がいいと思うぞ。その人はロアーヌ侯ミカエルの妹モニカ姫だ。こんな田舎の村にずぶぬれでやって来るとはただ事じゃあない。面倒に巻き込まれるのがおちだぜ」とハリードが忠告してやったら、緑色の髪の男がやたら大袈裟に反応した。
「モニカ姫! ミカエル様の妹!! それじゃあ、なおさら助けなきゃ。モニカ様、一体何があったのですか」
「お兄様に、ミカエルお兄様にお知らせしなければならないことが……早く……」
「こんな夜中にモンスターのいる森を突っ切ろうって言うのか、危険すぎる」とマスターは言うが緑のだらだら髪は「なんだか急ぎのようだ。今行くしかないだろう」と正義感をあらわにした。
「マスターの言うとおり一人じゃ危険だよ。あたしも行くよ」とさっき緑色の髪の毛を振ってやった一本結びの女も同行を決めた。
 やれやれだ。若さってやつは。ハリードが「ふーっ」とため息をつくと一本結びが反応した。
「おっさん。あんた口は達者だけどその曲刀は、ただの飾りかい?」なかなか勝気な性格のようだ。ハリードは何もしらないぺーぺー達のために、説明してやった。
「先代のロアーヌ侯フランツが死んでからまだ3か月だ。ミカエルが後を継ぐと決まった時にも、ごたごたがあったようだ。怪しいと思わんか。侯爵位をねらっている奴がいるんだよ。そして、ミカエルがロアーヌを留守にしている今こそ奴らが事を起こす絶好の機会なわけだ。ミカエルが侯爵でなくなれば、モニカ様を助けても1オーラムのもうけにもならん。それに、モニカ様、あんた今、金持ってないだろう? オレは前金じゃなきゃ仕事はしない主義なんだ」
すると、緑色の髪の男が「先代のフランツ様も、今のミカエル様も、オレ達開拓者のためにモンスターどもと戦ってくれてる。どういう事情でもオレは行くぜ」とまたも意気込んだ。ふん、勝手にしろ、とハリードは明後日を向いた。
するとマスターが「お客さん、ずいぶん腕が立ちそうじゃないですか。ここにも金はありませんが、馬ならあります。これでモニカ様を助けていただけませんか?」と言った。ハリードにとって馬は魅力的であった。
「馬か……良かろう。で、一緒に行くのはそこの兄ちゃんとねえちゃんか?」
ユリアン、オレも行こう」と聡明そうな男が言った。
「トム! そう言ってくれると思ったよ」緑色の髪の毛の男、もといユリアンはホッとしながら喜んでいた。
「お姉ちゃん、私も行くわ」とキッチンにいた女が言った。
「あんたはいいのよ。家に帰ってなさい」と一つ結びの女が言うのに対して、ユリアンが「サラをのけ者にしなくてもいいだろう」と言うと逆上したのか一つ結びの女が「のけ者になんかしてないでしょう! あたしはサラが心配なだけよ」と怒鳴った。面倒なことはきらいなハリードは「どうでもいいが、さっさと決めろよ」と言ったら、聡明そうな男が「この四人でいくよ」と案外早く決断した。
「トーマス!」――一つ結びの女は不服そうだ。
「メンバーは決まったわけだ。まあ、この曲刀カムシーンの名にかけて無事に送り届けてやるさ」とハリードが独り言ちると「曲刀カムシーン! お客さん、あんたあの有名なトルネードかい!」とマスターが反応してくれた。
「オレをそう呼ぶ奴もいるな。俺の名はハリードだ」ハリードを先頭に、自己紹介ラッシュが始まった。
ユリアン・ノールだ」と緑色のだらだら髪の男が言った。
「エレンよ。エレン・カーソン」と一つ結びの勝気な女が言った。
「妹のサラです」とキッチンにいたお嬢ちゃんが言った。
「トーマス、トーマス・ベントだ」と聡明そうな男が言った。
「モニカと申します」と皆知っているのにわざわざ紹介していた。
「これはご丁寧に、モニカ姫。まずは、一眠りだ。起きたら、腹ごしらえをして夜明け前に出発だ」とハリードが言ったら「待ってください。すぐに出発しましょう」というので、あほんだら、とハリードは思った。
「だめだ、モニカ様。あんたの様子じゃ、出発して10分と持たない。さあ、休んだ休んだ!」

 と言う訳で、なぜか5人はモニカのため、すなわちロアーヌの王家のために戦闘することになった。面倒なことに巻き込まれてしまったが、これも一興だろう。
「モニカ様をきっちりガードしてろよ。モンスターや追っ手はオレが始末する」
 ハリードも戦闘に入りつつ若者たちの戦いぶりを見ていた。ユリアンはどこか危なっかしいところもあるが着実に大剣で敵を倒していた。エレンは腕っぷしが強くて斧で敵を一網打尽にしていた。サラはとても器用な嬢ちゃんで弓矢を使い的確に敵を仕留めていた。トーマスはとても賢く、てきぱきと玄武系魔術を回復なり攻撃なり使いこなしていた。モニカは物陰から一同を見ることしかできなかったが、彼女も一応兄にならって小剣を使うことができるらしい。
ボス戦でガルダウイングが出てきたのにはハリードもびっくりした。死食でアビスゲートが復活したという噂がもっともらしいことが分かった。
難なく戦闘を終えると、無事にモニカをミカエルの元に届けることができた。

「モニカ、一体どうしたのだ? こんな所までやって来るとは?」
「お兄様、大変なのです。ゴドウィン男爵と大臣が反乱を!」
「そうか……それをわざわざお前が知らせに来てくれたのか。後ろの者たちは?」
「私をシノンの村からここまで護衛してくださったのです」
「わが妹を助けてくれたことに感謝するぞ。今は遠征中であるから、大した礼はできぬ。ロアーヌに戻ってか十分な恩賞をとらせよう。すぐにロアーヌに向けて出発せねばならん。ゴドウィンとは一戦交えることになる。お前が一緒に来るのは危険だ。そうだな……お前達、もうひと仕事してもらえぬか? モニカを北のポドールイまで送り届けてくれ」
「ポドールイ……あのヴァンパイア伯爵の所ですか!」とユリアンが喚いた。
「そうだ。レオニード伯爵は信用できる。へたな人間よりもだ。モニカ、よいな?」
「お兄様のお言いつけならば、喜んで」
「もちろん、モニカが吸血鬼になられては困る。充分注意してくれ。では出発の準備をするように」
 ハリードも皆に倣って出発しようとしていたその時、

「待て! お前、トルネードではないか?」とミカエルが言った。
「俺をそう呼ぶ奴もいるな」
「これは良いところに現れた。トルネードよ、お前は私とロアーヌに来てくれ。モニカの護衛はその4人で良い」
「出すものを出してくれれば俺は構わんぜ」
「こんな所で貴重な戦力が手に入るとは、世の中何があるかわからんものだな。ロアーヌへ戻ったら、すぐにむかえの者を送る。頼んだぞ」
 契約が成立したところで、ハリードはミカエルと5人を見送った。
「お兄様、お気をつけて」
「ロアーヌで会おう」
なんだかモニカが身軽すぎるような気がしたので、「もう少し護衛をつけてやったらどうだ?」とハリードは聞いてみた。
「予定外なのだ」
「えっ」
「ゴドウィンが父の生前から陰謀をたくらんでいるのはわかっていた。反乱を起こさせておいて、奴らの一味を一気に片付ける」
「計画どおりというわけか。恐ろしい人だ。だが、妹が知らせに来たのは計算外と」
「男爵に勝てる最低限の兵しか連れてきていない。そうでなければ奴は反乱を起こさない。これ以上、一兵たりとも減らすわけにはいかんのだ」
「しかし、妹の身に何かあったらどうする?」
「私が死ねば、あれも生きてはおられぬ身よ」
 ミカエルが馬を走らせたので、ハリードはそれを追った。

 ロアーヌが持っているテントの中で、秘密会議が行われた。ロアーヌ軍の幹部らしき男たちがそれはそれは丁寧に事の経緯を話してくれた。
「敵は2つの部隊に分かれております。本隊をゴドウィン男爵自らが率いており、前衛部隊の指揮官はラドム将軍です」
ラドム将軍までもがゴドウィンと……」
「仕方あるまい、ラドムの妻は男爵の娘だ」
「そのラドムってのはいい将軍なのか?」ハリードが訊いた。
「ああ。曲がったことが嫌いな男で部下にも好かれている。しかし、ラドムが相手となると苦しい戦いになるな」
 そんな奴が、反乱ね……。ハリードの頭の中がごちゃごちゃしてきた所、知らせの使いがテント内に入ってきた。
「申し上げます。ゴブリンの群れが領内に侵入してきました。ゴドウィン男爵が誘い込んだようです」
「ゴドウィンめ、モンスターと手を結ぶとは!」と兵士。
「ゴブリンどもを蹴散らすぞ」とミカエル。
「殿!! それではゴドウィンとの決戦に差し支えます」
「私はロアーヌ侯だ。この地を護らねばならん」
 その言葉を聞いたハリードは、ひとつ決心した。「新しいロアーヌ侯が名君だという噂は聞いていたが事実らしいな。俺に戦いの先陣をまかせてくれないか?」
「私の指揮では不安か?」とミカエル。
「いや、戦場であんたにもしものことがあったらモニカ姫がかわいそうだからな。後ろの方で見物しててくれ。俺の命を皆に預ける。この異国の者に命を預けてくれるか?」
するとロアーヌの兵士たちは高揚しながら、「猛将トルネードと共に戦場に立てるとは望外の喜びだ」「名誉なことだ」と口々にした。「共に敵を打ち破ろうぞ!」「「「「おー」」」」

 軍隊を仕切るなんて久しぶりだが、腕が鳴る。
「御命令を!」とミカエルの部下が訊くのでとりあえず状況を把握しておく。「敵はゴブリン軍団です。ゴブリンは4000、わが軍は2000です。敵を撃破してください」
 早速戦闘に入る。陣形は縦列にして、初っ端から全軍突撃する。相手の士気が相対的に下がる。戦っていくうち、敵の何千人かが退却しているのがわかる。ハリードは不思議に思いながらも目の前の敵を倒すことに全力を注いだ。兵力がなくなっていく頃、戦術を変えてとりあえず指揮官だけでも敵陣に突入していこうとハリードは決めた。だいぶ兵力も回復して、また突撃の準備をしようとした矢先、敵後方に騎馬隊2000騎が出現した。騎馬隊が奇襲をしかけるとの知らせに、もう終わりかと思った。しかし騎馬隊が攻撃したのは敵陣だった。というのも騎馬隊の指揮官はラドムであった。ラドムはやはり曲がったことが嫌いな性分なようだ。奇襲が痛手となり、ゴブリン軍の指揮官:ゴブリンキングは戦闘不能になった。敵軍は混乱を極め、その隙をついてハリードは敵陣を打ち破った。

「本来ならばミカエル様の下に真っ先にかけつけねばならない立場ながら、義父ゴドウィンの陣営に参加しておりましたのは万死に値します」
ラドムよ、よくわが軍に加わってくれた。お前のおかげでゴブリンどもを蹴散らすことが出来た。礼を言うぞ。今後も国のために働いてくれ」
「このラドム、必ずや今回のつぐないをいたします」

 次の戦闘に入る。「御命令を!」とミカエルの部下が訊くのでとりあえず状況を把握しておく。「敵はゴドウィン男爵の旗本です。敵は4000、わが軍も4000です。敵を撃破してください」
敵は波状盾の陣だ。こちらは適当に縦列陣形を選択する。戦闘が開始した。前進攻撃から始め、敵の兵隊が少なくなってくると敵が前二列を交代する。兵力がまだあるうちに、全軍突撃を決める。こっちの士気が上がり、向こうの士気が下がる。敵軍はまた前二列を交代して、さらに前二列の交代を指示した。その混乱ぶりをハリード軍は逃さず、右側の兵隊が敵軍の指揮官を倒すことに成功した。指揮官を失った軍は、全軍退却した。

 見事勝利をした喜びも束の間、逃げるゴドウィンを急いで追わねばならない。ハリードはミカエルと共にロアーヌの城に入り、ミカエルを護るライフシールドという陣形で城内のモンスターを倒していった。奥まってくると、向こうから気高そうな女がやってきた。
「ミカエル様!!」とその女は叫んだ。
「カタリナ! 無事か!?」とミカエルが心配そうに尋ねた。
「はい、大丈夫です……」と、カタリナは怪訝そうにハリードを見つめるので、ミカエルは「この男か? あのトルネードだ」と紹介した。
「ハリードだ。よろしくな」
カタリナは安心したようで「それは心強い味方ですわね。ゴドウィン男爵は恐らく、この玉座の間に!」と教えてくれた。
「よし、行くぞ!」

 扉を開くと、恐れ多くも鬼の姿をしたモンスターがロアーヌの玉座に座っていた。
「来たか、ロアーヌ侯。あいにくだがゴドウィンはとっくに逃げ出したぞ。全く役立たずめが」
「やはり、そうか。お前達が男爵を操っていた黒幕か。目的は? お前達のボスは何者だ? いや、答える前にそこからどいてもらおう。ロアーヌの栄光ある玉座をけがすことは許さん!」
「この玉座、聖王の重臣フェルディナントがあつらえた物だな。なかなか座り心地がいい。俺は、ここをどく気も無いし問いに答えるつもりもない。お前の力で俺を動かすことが出来るかな?」悪鬼が構えたのでこれは戦闘が開始されたのだとハリードは心得た。

 カタリナが加わり、三人になったので陣形をまた変えた。クローズデルタという、くの字型を選択し、ハリードは先頭に立った。これもモニカを取り巻くミカエルやカタリナを護るためだ。
 曲刀三日月刀(本人はカムシーンと呼んでいるが)を操るハリードは必死にデミルーンを用意するも悪鬼のぶちかましに邪魔されて攻撃にならない。カウンター技であるパリイを用意すると、ぶちかましが来た時にぶちかましを無効化することができ、なおかつ攻撃もできるので一石二鳥である。カタリナの小剣:マスカレイドをウェイクアップして大剣に変化させた後に繰り出すムーランルージュはなかなかダメージが大きかった。またミカエルの持っていた生命の杖の回復が功を奏して、見事悪鬼を倒すことができた。

「この難局を乗り切ることができたのも多くの者たちのおかげである。特に、ハリード、ユリアン、トーマス、エレン、サラ。お前たちは私の家臣でもないのによく働いてくれた」
「ハリード様有難うございます」
「金のためだ。別に感謝してもらう必要はないぜ」
以下5人も、モニカから謝礼を受け取った。
「トーマス様有難うございます」
「もったいないお言葉です」
ユリアン様有難うございます」
「自分が正しいと思うことをやれって、おやじがいつも……別に、そんな……」
「エレン様有難うございます」
「モニカ様と旅をしたの結構楽しかったよ」
「サラ様有難うございます」
「……いえ……」
「カタリナ有難う」
「モニカ様の勇気がゴドウィンの野望を打ち砕いたのですよ」
「十分な恩賞を与えよう」
「まあ、当然だな」
「もう、ハリード様ったら!」とモニカがはじけたように笑ったので、一同も笑った。

――数日後。
「これからどうする?」とミカエルが訊いた。
「何をするっていうあてもないんだが、ランスにある聖王の墓でも見に行ってみようかと思ってる」とハリードは素直に答えた。ミカエルの恩賞を貰った今では、あのハゲを倒せる可能性が見えてきた。「じゃあな、妹を大事にしろよ。モニカ姫、お元気で」

ロアーヌのパブで例の4人に会った。
真っ先にトーマスに話しかけたら、「ハリード、俺はピドナに行く事になった。どうだ、一緒に来ないか?」と言われたので
「ピドナを支配しているルードヴィッヒとは昔、色々あってな。奴の近くには行きたくない」とハリードは正直に答えた。
「残念だな、それじゃあまたどこかで会おう」
「おう、お前も元気でな」
 次にユリアンに話しかけた。
「ハリード、俺は新しく出来るモニカ様の護衛隊に入るんだ」
「そうか。俺は北に行く。しっかりモニカ様の護衛をしろよ」
「ハリードも元気で」
 次にサラに話しかけた。
「サラ、俺はランスへ行ってみようと思っている」
「ハリード、お別れなのね」
「行ってみるか?」
「でもお姉ちゃんが何て言うかな……」サラがエレンを一瞥した。
「ランスか……聖王廟のある街ね。行ってみようか」とエレンが答えたので「うん! 行こうランスへ、聖王様の街へ!!」とサラは喜んだ。
 のも束の間。装備を剥ぎ取ってパブで別れた。旅はこれからである。(続きは書きません)