文字狂い

オタクにもサブカルにもなににもなれずに死ぬ

2023年見た映画を振り返る

①グッドバイ、バッドマガジンズ

中洲大洋で貸切状態だった。主人公の顔がいかにも優秀そうなタマの顔をしていて、なんか無性にムカついた。こういうのが面接に受かってわたしは落とされるんだろうな、とこの当時までは思っていた。まあ結局そういう人(面接に受かる人)は、自己本位で、会社を辞めることになるのだが、その行く末って実にさまざま。っていうことを解らせられる映画だった。わたしはそういう映画だと思った。出版業界にシンパシーがある人なら、「今の時代、文化、ないから」というセリフに何を思うんだろう。そのセリフを作った人は2025年を迎えたら何を思うんだろう。思えば、2010年とかにデビューしたカルチャーってすべて「手駒」なんだよな。何の?って言われると、「時代の」としか答えようがないが。2020-30年に世に出たかったという後悔があるんじゃないのかと思いつつ、2020にデビューするわたしとしては2010年代デビュー組の顔色も伺いつつの世渡りをするまでだろう。

②日の丸~寺山修司40年目の挑発~

たくさん感想を持って、持って帰ろうと思っても、10個あるうち4つしか思い出せなくて、やがて2個くらいになって、今でも覚えている事柄としては「寺山修司具志堅用高に喋り方が似ている」ということと「戦後であってもキャラメルとかおまるに愛国心が代表されていて、熱い」と思った。愛国心があると、君が代を歌わないらしい。わたしにもし、「日の丸とは何を指しますか」と言われたら、いのち、としか言いようがない。いのちには、血が入っている。虫には血がないが液はある。いのちのかがやき君を揶揄する人はいるが、あんなもんだろ人間。とりわけ日本人。みんな皮膚を剥がしたらいのちのかがやき君みたいななりをしているだろう。それがいのちのかがやきだろう。愛国心はくだらない、という意志が多分寺山修司の発明なんだろうか。

③ベネデッタ

今年の一本。めちゃくちゃ影響を受けた。統合失調症的映画(他、「ダニエル」「チタン」)なのだが、大前提統合失調症とされる人は、各々に神様がいる。神様がいると自覚したらだいたい治る。神様が見つからないうちは、めちゃくちゃ薬飲んだり、嫌な目に遭う。さてこの主人公ベネデッタは修道院が巷に存在した時代背景上「自分にはイエス・キリストが昔からわたしを守ってくれている」「わたしはイエス・キリストの妻である」自覚があるのだが、それは、実はただの一介の悪霊なんだけど、その悪霊をイエスとは違うと証明できないという映画だった。このような不幸が起こるのは、統合失調症を該するに、「神様が圧倒的に主体(憑代)よりイニシアチブをとっている」ためによって、起こった一騒動なのだが、ベネデッタは一貫して裁かれず、ただただ教会の要職についていた人たちが陥落した。ベネデッタは悪霊の成すままに暴れまわり、そもそも、なぜ悪霊はそんなに人々を脅かすことができるのかというと、悪霊が生まれるくらい、人々の中に悪があったからで、ベネデッタは結局生涯なにか正義に責められることはなかったが、晩年部屋が与えられずほぼ乞食みたいな感じだったと締めくくられるのだが、かわいそうな人でしかなかったんだろう。わたしは、この映画を見てから、かわいそうにならないためにはどうしたらいいんだろうとずっと考えていた。たとえわたしがベネデッタの生まれ変わりだとしても。

④詩人の血

ジャン・コクトーの映画。ジャン・コクトーは松永天馬がよく引用しているので、博打的に面白いのかなと思ったらなんのことないただのファインアート映画だったので面白くなかった。短いというのがよかった。

⑤オマージュ

韓国映画で、ここに出てくる売れない映画監督というのはつまりこれを撮っている監督のことであるが、ロードムービー的映画だった。「文系大学生が出世するためにやるべきこと、それはポエムだ」というポエムが流行っている描写を見て、なんとも言えない気持ちになる。

⑥花子

まひるのほし」が感動するくらい良かったので、同じ監督のDVDを買った。花子はお母さんが作ってくれた絶対おいしそうなご飯を畳の上に置いて、なんだか飾り付ける。それに気づいたお母さんは写ルンですで毎回写真を撮るようにする。なにがいい、とは一概に言えないけどこれまたよかった。花子が姉に対していやがらせをやっている、という場面があったが、姉が勉強しようとすると花子が邪魔するらしいが、思うに、花子は最初からこんなものが役に立たないことを知っているから、諭していたようにしかわたしは思えなくて、花子はめちゃくちゃ常識に対してロックだった。花子の母親は「花子を見ていると絶対退屈しない」と言っていて、母親だなあと思った。わたしは花子でありたい。

⑦リトル・マーメイド

リトルマーメイドが有色人種で再現しますよ!っていうニュースが大学時代にあって、その時のキャストとは違う人だったけど、オレンジ色の肌の人がアリエルを演じていて、エリックがちゃんとアリエルに本気で恋してたようにしか見えなかったのが面白かった。なんかずっと泣いてた。人間が好きなのに海でしか生活できないってつらいなあ。

さらば、わが愛/覇王別姫

レスリーチャン(蝶衣)がこの映画に亡命したけど、小楼がかっこいい映画だよなと思う。小楼は調子者でそれが命取りになるけど、そうやるしかやりようがないよな……と思う。博多駅をあるくと小楼みたいな中国人がいてしんみりする。小楼が好きってことはつまり、菊仙がめちゃくちゃ活躍してるから好きなんだけど、映画の中ではあんまりいい思いをしないまま小楼の前から消えてしまった。「青木将校が生きていたら京劇を日本に持って帰っただろう」というセリフを見てすごくびっくりしたけど、思えば大学のゼミでこの映画観たことがあって、その当時はなんにもわかってなかったなと思った。

⑨美女缶

自主製作映画史上最高傑作だと思う。この映画からどこか真似したくなるくらいやみつきになってしまう。この映画を見た近辺に「おもしろいひも」という小説を書いた。

⑩ママボーイ

台湾映画だけどローカル風味がなかった。しいて言うならば「マザコン」と言うのではしっくりこないような、まさに「ママがいないと何にもできない人」という意味で「ママボーイ」の主人公なんだけど、筋書がしっかり三幕構成で勉強になった。ビビアンスーが枯れてて本当によかった。

⑪オオカミの家

映画を作る作り口は豪華だけど、こういう作り方って疲弊しないんだろうか?と思った。まあアニメというのはブラック企業のやる手品なので、仕方ないだろうが。事前情報なしで見たけど、かえってそれが損している気がする。

⑫鯨の骨

あのちゃんってすごいんだ。って気づいた映画だった。かねてからあのちゃんというのはカリスマ性が凄いとかなんだとか言っていたけど、ぱっと見夢眠ねむと似ているので、まあその人も凄いからなとか思っていたけど、この映画を成立させるうえで、あのちゃんというアイデア、アイコンがなければ着想しなかっただろうな、という点ですごいなと思った。設定の作りこみがおしゃれで大変満足した。オチもいいしね。