文字狂い

オタクにもサブカルにもなににもなれずに死ぬ

現代の神話

これは神話だ。現代の神話。

ある日のこと。ツイッターを見ていると、フォロワーが一人減っていた。
しばらくしてそのアカウントは凍結された。
リストカットの配信がバレたからなのだろうか。
忽然といない。

私には趣味がある。たき火を見ること。
YouTubeで見たり、つまようじを燃やしたりして楽しんでいた。
消えたフォロワーも似たようなもので、毎日誰かと炎上していた。

私の夢は、めいっぱい手紙に呪いをこめて
その手紙につけた火が日本中を覆って焼き尽くすことである。

ある日。庭に植わったリンゴの実が熟した頃。
そのリンゴをぬすもうとしたやつがいた。
手首に11本線が入っていた。

私は彼があの消えたフォロワーだと思った。
庭に落ちていたリンゴを渡した。彼は一口かじり、私に渡した。私もそれをかじった。
やがて彼が服を脱ぐので、私も服を脱いだ。彼に合わせて、私も行動した。
やがて脳内に火がともり、末たんにいたる全身にまで飛び火し大炎上した。
最後に一つ打ち上げ花火が終わると、急に冷めた気持ちになり、互いによそよそしく振る舞った。

目が覚めると、彼の姿が見えない。昨日着ていた服はそのままでどこへ行ったのだろう。
ふとベッドがどろどろになっていることに気づいた。固まる前のろうそくのろうのような液体。これが彼の正体であった。
ためしにそのどろどろにマッチの火を投げてみると、一区画よく燃えた。
その日から私は一日限定で誰かのゆきずりの女になって、そいつの液体で街を燃やすようになった。警察もホームレスも社長も大学生も関係なくよく燃えた。

でもある日、ふとリンゴが食べたくなって自宅に戻ったらあのリストカッターがいた。
どうやら私を待っていたらしい。なけなしのお金を集めて、休憩した。
その時ふたりで一本のペットボトルの水を分けて飲んだ。彼が水を飲み干すと目から涙があふれて、部屋を満たした。
私は苦しくて、悲しくて、必死に泳いで逃げようとするけど出口が見えない。
ぽっかりとした穴をみつけた。
その穴めがけて一気にすいこんだ。結果的に、リストカッターのくちびるにすいついた。
すると私は彼の体内に入り込み、気がつけば母なる体からすべりおちて、この世に生をうけた。