文字狂い

オタクにもサブカルにもなににもなれずに死ぬ

干からびたへび

僕は干からびた蛇。三十代にしてもうお爺ちゃんだ。多分出世しないし、ずっと平たい道を歩いていくのだろう。

4月。かわいい新入社員が入っている。

「実は私人妻なんです」と言っていた。

僕はその子のスマホをパクって、一晩かけてスキミングした。翌日、適当に女子トイレにリリースした。

その子の旦那はやせててひょろひょろ長くて、頼りなさそうで、僕が一発脚を蹴ったら一生立ち直れなくなりそうな人だった。

女の子はほぼ毎日セックスしているみたいで、その中の一日僕が横取りしたってかまわないだろう、と思った。

僕は早速女の子を飲みに誘って、序盤睡眠薬を飲ませて、すぐに何も言わなくなった。個室の居酒屋で一発決めて、タクシーを拾ってベンチに転がした。

しばらくすると、女の子は懐妊したようで、仕事を休んだ。またしばらくして、仕事に復帰して、子供の写真を見せてくれた。ガッツ石松似だった。

暗い歓びが僕をしびれさせていく。相変わらず僕は家に帰ってジャンクフードを貪り、かたや僕の化身はあの子の母乳と言う完全栄養を摂取してすくすく育っていく

また何度目かの桜が咲いた。花見であの子の隣に座る。あれからずいぶんと太っていった。僕はなんとなく腰に腕を巻きたくなったけど我慢する。いつもこんな感じだ。

どんなにすごいことを成し遂げていても、クリスマスはひとり。ついに悪運が祟って強盗に入られた。心臓を刺されて、もうすぐ僕は死ぬだろう。せめて、僕の妻と、子と、並んで歩きたかったなと思いながらふらふらと外を歩く。

するとたまたまあの子が買い物袋提げて歩いていた。僕を見つけて、「今日は子どももいるんですう」という。子供はやせて長くてひょろひょろしていて、それでも神様が最後に楽園を見せてくれたのだろう。